色と空と素粒子

世の中に居づらくなったとき


色即是空


と唱え


すべてのものを空に帰す


空に浸り


色に惑わされなくなったとき


空即是色


と唱え


空をこねて


色を与え


ひととき空に遊ぶ


そのうち


己の作った色に執着し


色に煩わされ、悩むようになり


色即是空と唱える


なぜ


色即是空



空即是色 


二つあるのかといえば


そういう訳だったのかと


一人納得する


一対のものは


繰り返し


平衡を保つ


バランサーなのだ


我々はこの精密機械の中を


ぐるぐる回っているのに過ぎないのかもしれない


素粒子物理学でも


何もないところから


ぽっと


プラスとマイナスの力を


持ったペア素粒子が現れるごとく


色が空から生じるというのは


まさにそういうことかもしれない